どうもしないなんて言って、本当は何を考えているのか。
今度は、さっきより明るい声で生田が笑う。
「この痛みを何度超えたら、ゴールにたどり着くんだろ」
さっきから何を言ってるのかさっぱりわからない。ただぎゅうぎゅうと抱きしめられているだけだ。
「ゴールなんてないのかもな……」
私に話しているようでそうじゃない。それはまるで自分に言い聞かせているようなものだった。だから私は、その背中をただぎゅっと抱きしめ返した。
――その後。生田は、ただ唇を重ねるだけのキスをした。
そして、「姉貴はまだやり直せる歳だろうし。今は辛くても、大丈夫だろ」と、なぜか私を慰めるようにそう言った。
「じゃあ、ゆっくり休んで。おやすみ」
予想に反してあっさりと部屋を出て行った生田に、ホッとしたのかがっかりしたのか自分でもいまいちつかめない。
でも、ただ一つ言えるのは、生田に嫌われてしまうのが今まで以上に怖くなっているということ。
そして、その存在を、その愛情を、手放したくないと強く願ってしまっている。
人の感情は絶えず動いている。大きくなることもあれば、小さくなっていくこともある。育っていくこともあれば、しぼんでいくことも――。ああ、だめだ。どうして、私はこうも、ネガティブなんだろう。悲観的で臆病で。そういうところは昔から全然変わらないのに、無駄に年を重ねて哀しい経験を積んでいるから、余計にその臆病さに拍車がかかっている気がする。



