「そんな無理、所詮長くは続かない。不毛な努力だ。自分で自分の首を絞めてんだよ。本当の自分を見せない奴を、本当に愛せるはずがない」
ずっと黙っていた生田が、突然口を開いた。
「あ、あんたに、私の気持ちの何が分かるってのよ! あんたみたいにね、強い人間ばかりじゃない。周囲はどうだっていいって完全に思えるほど、強くないんだよ!」
お姉さんが涙でぐしゃぐしゃになった顔で生田に叫んでいた。
「強くないからだよ。その弱さを相手に見せてやれよ」
その言葉はどれも辛辣で優しさの欠片もないように聞こえるけれど、でも、それは全部お姉さんを思っての言葉だ。でも、お姉さんの気持ち、痛いほどよくわかる。
「……分かります。上手くやろうとしちゃうんですよね。私も長女だから。勝手にそうすることを期待されてるって思ってしまうっていうか。自分を抑えて……。もちろん、私とお姉さんじゃ立場や状況は全然違いますけど」
「そうだよね。そうなんだよ。あんたみたいなマイペース末っ子とは背負ってるものが違うんだよ」
お姉さんは、何年も何年も、周りから弾き出されないように、周囲の人間の理想とする姿を演じ続けて来たのかな。
「……ったく」
生田もそうやって吐き捨てていても、きっと心の中は違うんだろう。



