「本当に、美味しいです! お店で売っているものよりもおいしいですよ」

本当に口にする料理すべて絶品だ。

優しいご両親のおかげで、身体中に張り詰めていた緊張が少しずつ解かれて行く。

「あらー、やだー! 沙都さん、そんなに褒めてくれたら、またすすめたくなっちゃうじゃないの。はい、どうぞ。もっと食べてぇ」

「おい、母さん。料理は他にもあるじゃないか。同じものばかりすすめるんじゃないよ。それに、私が準備した日本酒とは合わない料理ばかりじゃないか」

「ええ? 私に何を作るか聞かないからいけないんですよ。どうしてワインを買わないんですか」

「私は日本酒を好きだと分かっているだろう? 本当に、母さんは――」

「あ、あの! 私、どんなお酒とも、なんでも美味しく食べれる人間なので。大丈夫ですよ!」

言い争いを始めそうになったご両親に慌てて言葉を挟む。

とにかくよく喋るご両親だ。それに比べて――。

ちらりと隣に目をやれば、そんなやり取りも慣れっこなのか生田は構わず料理を食べていた。

そんなところに、鋭い声がリビングダイニングに響いた。

「あーっ。もう、サイアク。なんで誰も電話にでないのよっ。今日帰るって言ってあったよね? 久しぶりにこっちは帰省してんだよっ!」

え――?

突然玄関の方から声がした。

「あら、お姉ちゃん?」

「椿か」

目の前のご両親が揃って声を上げる。
「お姉さま、ですか?」

噂の――生田姉の登場か!

「そう。椿も今日帰省してくることになってたのよ」

お母様がにっこりと頷く。
私に再び緊張が走る。