「内野さんに生田、おはよう」

その時、隣の席の先輩、田崎さんの声が執務室内に響いた。それと同時に私の表情は思いっきり笑顔になる。

「田崎さん、おはようございます!」

朝からやっぱり爽やか。田崎さんは普通の表情で既に微笑んでいる。
爽やかレモンからでも生まれて来たのって雰囲気に、私は密かに憧れていた。
そして、恋愛小説やマンガの次に私の癒しになっている人。
色白で髪の毛はさらっさらで、スーツ姿も爽やかで、何より誰にでも分け隔てなく優しいのだ。

私みたいな女にも、素敵女子にも、同じ扱いをしてくれる。

イイオトコって、そういう人のこと言うんだよね。

それは、大学時代からいろんな男を俯瞰して来た私の分析結果。
イイオトコほど、女の見てくれで態度を変えたりしない。好きになってくれるなんてことはないけど、その法則はある気がする。

「内野さんは、朝から元気で気持ちいいよ。仕事の始まりは大事だからね。今日も頑張れそうだ」

「いえ、そんな……」

隣の席に着きながら、特上の笑顔をくれる。

私こそ、隣に田崎さんがいてくれるから、こんな乾ききった毎日を乗り切れるんです――!

心の中で、手を握り締めながら呟く。

やりがいより義務感にまみれ、それでいてやたら拘束時間の長い仕事。

こうして少しくらい楽しみを見出していないとやってられない。

少しは乙女な気持ちでいても許されるよね、なんて勝手に自己弁護して癒されている。