あー、やばいかも――。

全然疲れが取れてない。すっきりしない、重怠い身体を引きずるように出勤すると、生田が目に入った。

「あ、おはよ……」

「おはよ」

私と背中合わせになる場所が生田の席だ。

私の声で、ちらりとこちらを振り向く。

だから――。その冷めきった目が怖いんだって。

こうして、近くにいるようになって四か月目。それでも、このよそよそしさは変わらない。

それに、この人だって昨日はそれなりに飲んでいたはずだ。それなのに、まったく変わらないその崩れない姿。

この人、ノリノリになったりすることないのかな。いや、まったく想像できない。

そのくせして、同期の飲み会の出席率、結構いいんだよね……。

一人ぶつぶつと心の中で呟きながら自分の席に着く。

「顔、相当、疲れ滲み出てる」

「えっ?」

独り言か声を掛け来ているのかはっきりしない声に、私は思わず椅子ごと振り向いた。

「あんたの顔。酷いよ」

「はい?」

もともと無口だからあまり生田の方から声を掛けて来ることはない。だから、会話の内容より面喰う気持ちの方が大きかった。

「疲れを次の日に残すほど飲み会で騒ぐの、もうやめれば?」

さらに冷めきった目を私に向けたかと思ったら、すぐに身体を元に戻している。

取り残された私は、一体どうすれば――?

「悪い疲れじゃなくて、心地いい疲れだからいいんです」

まあ、あなたみたいな人には分からないでしょうけど――。

と心の中で悪態を吐いてから、私も身体の向きを元に戻す。

「そうは見えないけどね」

意外にも、背後から続きの言葉が聞こえた。

なに? 一体、なんなのよ。

頭の中にはクエスチョンマークが激しく点滅する。

人には興味ないんじゃなかったのか。

同期だし同じ課にもなったし、少しは気心許してくれてるってことでいいの――?

よくわからないけれど、まあいいや。
私も身体の向きを戻し、ノートパソコンを開いて電源を入れた。