「ふふ。困っているかずさも可愛いな。僕は君の困っている顔が見たくて無茶なおねだりをしていたんだよ?知っていたかい?」
「し、知りませんでした……」
ツンツンとこれでもかと頬を指でつつかれても、全く痛くない。
からかわれていると分かっているのに、照れてしまうのは惚れた弱みというやつか。
ひとしきり頬の感触を楽しんだ篤典さんは、私の髪を撫で耳たぶにキスをしてこう言った。
「大丈夫。今日は何もしないよ。今日は僕をかずさの枕にしてくれないか?」
「枕ですか……?」
枕にしては随分と抱き心地が固いような気もするけど……。
「最近眠れていないんだろう?」
……目の下のクマはメイクで隠していたというのに、篤典さんにはとうに見抜かれていたということか。
「僕が悩ませているんだね。すまない」
悲しませるつもりは毛頭なかったのに……結果として、私は篤典さんを傷つけてしまったのだ。
「私が……!!」
謝罪の言葉を紡ごうとすると、すかさずキスで塞がれる。
身体がへとへとになって、詫びる気が削がれるまでキスは長く続けられた。
「いいんだ。何も言わなくていい……」
篤典さんはよそよそしい態度ばかりしていた私を責めるどころか、優しく抱きしめてくれた。



