不埒な専務はおねだーりん


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「あのう……浜井さん」

出来上がった書類をおずおずと持っていくと、浜井さんはうわあっと声を上げ大興奮した。

「すごいわ!!本当にかずさちゃんってば出来る子ね!!」

ホクホク顔で書類をチェックしだしたのを見て、ホッと胸を撫でおろす。

喜んでいただけたようで、何よりです。

「ところでかずさちゃん。いつ髪型変えたの?」

「これには海よりも深い理由がありまして……」

それ以上は聞かないで欲しいと、目を逸らして口をつぐむ。

ポニテ眼鏡での撮影会と引き換えに仕事をしてもらったなんて恥ずかしくて言えやしない。

(最初からやる気を出してくれれば済む話なのに……)

本当はものすごーく優秀だってことをあえて隠す必要がどこにある?

やる気を出した篤典さんが短時間ですべての書類に目を通してしまったので、本当は中身なんて読んでないのでは?と思わず疑いの目を向けたところ……。

“試してみるかい?”

あまりに得意げに言うものだから、書類から適当な物を選んでそのタイトルを読み上げると、彼は指定したページの一言一句をそらんじてみせた。

……恐るべき特技である。