不埒な専務はおねだーりん


互いに合意が取れたところで、篤典さんは網タイツとガーターベルトをしまい、代わりに赤フレームの伊達メガネとシュシュを引き出しから取り出した。

……青ダヌキのキャラクターでお馴染みの某国民的アニメのように、引き出しが異次元につながっているとでもいうつもりなのか。

「おいで、やってあげる」

遠慮したにも関わらず、篤典さんは私のシニョンをほどいて髪をブラシで梳かすと、鮮やかな手つきでポニーテールに結い上げてしまった。

プロのような見事な仕上がりに、これではどちらが仕える方なのか本格的にわからなくなってくる。

「かわいいっ!!すごくいいよ!!」

「はあ……」

篤典さんはポニーテールで伊達眼鏡をかけた私を見て鼻息を荒くすると、ご満悦といった表情でパシャパシャと何度も携帯で写真を撮っていった。

(そんなにポニーテールが好きなの……?)

あまりの熱意にたじろいだ私はもじもじとタイトスカートの裾を握りしめるのであった。

こんなんで、本当に仕事してくれるのかなあ……。

「大丈夫だよ、かずさ。心配しなくても、僕は約束は守る男さ」

篤典さんはそう言うと、ニッと歯を出して笑った。

そして、一通り写真を撮り終え携帯をデスクにおくと、目にもとまらぬ速さで書類をめくっていき、1時間足らずですべての書類を片付けてしまったのだった。