「専務、そろそろお仕事しましょう?」

「え~!!」

あからさまに嫌そうな声を上げた篤典さんを無視してオセロの石を片付ける。

っていうか、何でこんなものがそもそも執務室にあるのよ!!

「“え~!!”じゃないですよ。こっちの書類は急ぎらしいので、すぐに見て頂けますか?」

グイグイと強引に背中を押して、篤典さんのためにあつらえた特別仕様のオフィスチェアに着席させる。

しかし、それでも彼は一向に書類に目を通そうとせず、今度はクルクルと座席を回転させて遊び始めた。

「いいじゃん〜。もっと遊んでよ〜かずさ!!」

「やっぱりサボる口実だったんですね!?」

「いくらかずさのお願いでも無理なものは無理だよ。僕が気まぐれ屋なのはかずさも知っているだろう?」

ニコリと無邪気に微笑むことが出来るのは、嫌なものは嫌だと言うことがこれまで許されてきた故の傲慢さの賜物である。

「それとも、かずさが僕のやる気を引き出してくれるのかな?」

「やる気ですか……?」

「僕の“おねだり”聞いてくれる?」

篤典さんからキラキラとした瞳でねだられると無下にノーとは言えない。

私だって出来ることなら与えられた役割を全うしたいのだ。

渋々頷くと、篤典さんはデスクの引き出しを開けて“あるもの”を取り出した。