さっきから無言という名の話しかけないでという合図を無視して、アイツは私に言葉を投げてくる。






「ねぇ!ここゲーム使えんの?」





「飯うまい?」





「トイレどこだっけ?」






「……あのさ、」





「あ?」






こいつは無邪気な顔で私をぽかんと見つめる。イライラしてる私には、この顔がなんか腹立つ。





よし……落ち着いて。






「そんなに聞きたいことがあるんなら看護師さんに聞いたらどうですか?」





私は冷静に答える。





「えー、だって俺、困ったら南ちゃんに聞いてねって言われたし。」






「……きやすく名前で呼ばないで。看護師さんに何言われたか知らないけど、私は君の面倒なんて御免。」






「冷た~。あ、お前彼氏いないだろ」





「だったら何?」





「別に~?ただお前の彼氏になる奴なんて、この世にいんのかなと思っただけ。」





このニヤニヤと笑う顔が、私のイライラを増量させる。





「じゃあアンタはいるの?」





「いないけど?」





「はっ、人のこと言えないじゃん。」





「ふっ、俺はね、作らないだけなの。」





「ふーん、意地張っちゃって。どーせ出来ないんでしょ?」





「あのさ、お前と同じにしないで。言っとくけど、俺学校でちょーモテモテだし。」





「どうだか。」





「ま、お前は残念ながらモテないよなぁ。可愛そ~」




「…………これ以上話しかけないで。空気が汚れる。」





「その言葉、お前にそのまんま返してやるよ。」












こうして私達は、世でいう犬猿の仲となり……





「……」




「……」





言葉を交わすことはほとんど無くなった。