「手一杯って言うか古瀬さんがいるからいいんですよね?今度ダブルデートしましょう。」とニコニコ顔で辻本を見る。

辻本は黙ってうつむく。

「どうしたんですか?」と心配そうに声をかける。

「ごめん、今はそういう気持ちになれない。」とまた胸を掴む。

「すみませんでした。そうですよね今こういう話をするべきじゃあないですよね、軽率でした。」と頭を下げる。

「ごめんね。」

「いいえ、わたしが悪いですから。」

「……。」

「……。」

「もうそろそろ帰りませんか?定時過ぎだので。」

「そうだね。」と辻本は壁にかけてある時計を見ると定時を過ぎていた。

「さっき渡瀬部長が『タクシーで帰りなさい。』とタクシーチケット預かってきました。」とポケットからチケットを出して辻本に渡す。

「じゃあ一緒に帰りましょ。」

「でも……。」

「いいって。」と立ち上がる。