ゴマちゃん……遥香、君もそう思うだろ?
縫いぐるみを抱き上げると、キューンと返事をする。
その口にチュとキスをしたと同時に、デスクに置いた携帯がブルブル震える。
発信元『ゴマちゃん遥香』の文字に笑みが浮かぶ。
画面をプッシュすると彼女の元気な声が飛び出す。
「恭吾さん、約束忘れていませんよね。今日はお買い物ですよ。一世一代のお買い物ですよ!」
昔の悪い癖が出る。
「買い物?」
惚けたように言うと電話の向こうで遥香が泣きそうに言う。
「だって、今日、指輪、買いに行こうって、約束……」
グスンと鼻を鳴らす遥香の顔が思い浮かび、頬が上がる。
「嗚呼、そうだったね。でも、今日は買わない。オーダーメイドするから」
エッと息を飲むのを感じる。
初めから、白鳥に聞いた店に連れて行くつもりだった。
「泣かせたみたいだから、君の好きに注文していいよ」
こんな風にしか言えないが、彼女の好みの物にしたかった。
「ーー恭吾さ〜ん、好きです。大好きです」
電話の向こうで、愛おしい彼女が泣き出す。
甘い言葉で、もっと泣かせるといけないので、縫いぐるみに囁く。
「遥香、僕も好きだよ……愛している」
The End 〜悩ましきは猛進女の撃甘プロポーズ〜