バーチャル広報誌『ミカド』三月号は、異例のスピードでダウンロードされ、親会社KOGOのみならず、取引先は勿論、海外のメディアにまで取り上げられるほどの話題となった。

「お内裏様とお雛様のキスシーンが見られるなんて!」
「私は、涙を拭うお内裏様にキュン死したわ」

聞こえてくるのは、あくまでもお内裏様とお雛様のこと。
まぁ、誰が見ても、アレを矢崎課長と神崎主任だと思わないだろう。

現実以上に良く撮れた写真に、ケイジというカメラマンもご満悦で、また撮らせて、と頼んで来たが、キッパリ速攻で断った。竜崎が。

「本当にカッコイイです。お内裏様」

遥香は生データーをケイジからブン取り、携帯とパソコンに保存し、尚且つ、プリントアウトし、その束を持ち歩いている。

恥ずかしいから止めてくれ、と言ったところで止めないことは分かっているので、無駄な抵抗はしない。

「でも、それより、いつもの恭吾さんの方がもっと好きです」

全く、この女は……。

「ーー僕はスイーツが好きだ。でも、それより君の唇が好きだ」

彼女の唇にソッとキスを一つ落とし、この間言えなかった言葉を告げる。

「好きだよ、遥香、あの時は意地悪してゴメン」