涙を溜めた真ん丸い目が、信じられない、というように僕を見る。

「ーー今……ありがとう……って」
「言った。無性に甘い物が食べたかった」

あゝ、と女は肩を落とし、項垂れる。

「だから、ありがとう、なんですね」
「ああ、君の作った甘い物が食べたかった」

しばし沈黙の後、女がガバッと顔を上げる。

「今、私の作った物と仰せですか!」

そして、噛み付かんばかりに、デスクに身を乗り出す。

「何を興奮しているのだ! 資料がバラバラになるじゃないか!」
「大丈夫です。私が整理してあげます」
「だが君は、もう僕に付き纏わないのだろ」
「とんでもない! 誰がそんなことを!」

君だ、と言いそうになったが、何も言わず、二つ目のマカロンを口にする。
レモン味だ。甘酸っぱい。

不意に、身を乗り出す女の唇に目がいく。艶めく唇。
甘いだろうか……。

ゆっくり立ち上がると、今尚、ギャーギャー言っている女の唇に唇を寄せる。

お互い開けたままの目が、至近距離でぶつかる。
見開かれた女の瞳が、徐々に閉じていく。

柔らかな彼女の唇はストロベリーの味がした。
それをもっと味わおうと、女の後頭部に手を添える。