「これ!」
バンと女がデスクに紙袋を置く。
その拍子に、雑然と置かれた資料の山がバサバサと崩れ落ちる。
「先程、お渡しできなかったクリスマスプレゼントです!」
プレゼントを叱られながら貰うのは初めてだ。
「捨てようと思ったのですが、自分の手で捨てるのは忍びなく……どうせなら、送り主に捨てて頂いた方が……」
そこまで言うと、女がグッと唇を噛む。と同時にポロッと一粒涙が零れ落ちる。それを機に、堰を切ったように、次から次へ溢れ落ちる。それを両手の甲で拭い、必死で言い訳をする。
「ーー捨てようと思ったのに……諦めようと思ったのに……」
とうとう我慢しきれなくなったのか、喚き散らしながらギャンギャン泣き始めた。
まるで子供だ。
こういうシチュエーションは苦手で嫌いだ。
こういう女も苦手で嫌いだ。
だが、この女のこういう姿を可愛いと思う僕がいる。
何も言わず、僕は袋を開ける。
中には黒い革の手袋と、透明なプラスチック容器に入ったマカロンが入っていた。
赤・黄・紫……カラフルな色に心が踊る。
赤いマカロンを抓み、口に入れるとストロベリーの香りが口いっぱいに広がる。
寒々としていた心が、身体が、ゆっくり温くもっていく。
「美味しい、ありがとう」
言葉が自然に溢れ出る。