チリッと一瞬、胸が痛む。
「決めていたんです。今日、もう一度告白して、ダメだったら、諦めようって」
フフッと寂しそうに女が笑う。
「私、本当に恭吾さんが好きです。例え、お風呂に何日も入らなくても、お洋服を三着しか持っていなくても……ゴミ男と呼ばれていても、好き……でした。ちゃんと振って頂き、ありがとうございます。もう、付き纏いません」
深々と頭を下げると、女は竜崎たちの方に向かう。
一人、その場に残された僕は、しばし考える。
最初の『好き』は『です』で現在進行形。後の『好き』は『でした』で過去形……ということは、とうとう、諦めた、ということだ。
ーー良かった、と嬉しい筈なのに……どうしてだろう、気持ちが沈んでいく。
半分以上残っていたシャンパンを一気に飲み干す。
そうだ、仕事をしよう!
もう、誰に邪魔されることなく存分に仕事ができるのだ、めでたいことじゃないか!
賑やかなクリスマスソングが流れる鳳凰の間を後に、僕はホテルを出る。
途端に冷気が身体の温度を奪い、ブルッと震える。
白い息が現れ消えるその向こうに、満天の星空が見える。
空気が澄んでいるからだろう、クッキリと見える輝きに、珍しく魅了され、見つめ続ける。
そして、改めて悟る。
また、一人になったのだと……。


