「桔梗さん、良かったですね。幸せになって欲しいですね」
「ーー君は、桔梗が男嫌いになった理由を知っているのか?」
「はい、お義母様から」

個人情報もあったもんじゃないな、本当、ペラペラと!

「男女の仲とは、こういうものかもしれませんね」
「どういう」
「こんな風にトントン拍子にです」

女の目がフードコーナーに向く。釣られて見ると、君島が桔梗に皿を渡し、料理を皿へとサーブしている。

「お二人、幸せそうだと思いませんか?」

どうみても、主人に仕える小間使いに思えるが……。

「私みたいに、ただ追い掛けているだけでは幸せになれない、ということです」

なるほど、それは言えている。

「恭吾さん、もう一度お願いします」

女が僕を見上げる。その顔がいつになく真剣だ。

「私をお嫁さんにして下さい」

精霊の願いを断ったらバチが当たりそうだが……。

「ーー悪いが、願いは聞き入れられない」

やっぱり、と女が呟く。

「ーー仕方……ありませんね。なら……」