今の流れの何処にカッコイイ要素があったのだ? 分らん奴だ。
しかし、褒められて嬉しくない奴はいない。
少しだけ、口角が上がるが、やはり言っておかねば!

「僕は、愛人も持つつもりはない!」

もう用事はない、と言うように、立ち去れ、と顎をドアの方にクイッと向ける。そして、パソコンに目をやった途端……。

「恭吾さんの笑った顔も見られたし、ハイ、帰ります」

調子っぱずれな鼻歌を奏でながら、海外事業部から出て行く。
――微妙に上がった口角を……見破られた!

呆気に取られながら、女の出て行ったドアを見つめていると、いつの間に舞い戻ったのか、デスクの前に君島が立っていた。

「課長、意地張らずに、帰らないでぇ~って言ったらよかったのに」

ニヤニヤ笑う奴をギロリと睨み、パソコンを操作する。

「今、お前にフォルダーを一つ送った。今日中に、このプログラムの訂正をお願いする」

エッ! と君島は青くなり、飛んで自分の席に戻る。
フン、上司をからかうなど百万年早いわ! 思い知れ!