触らぬ神に祟りなし、ということだろうか?

否、立ち去り際に見せた二人の顔、あれは……ハロウィンパーティーで見た、「お菓子をくれなきゃ、悪戯するぞ」の二ヒヒ顔だ。

全く、何が可笑しいのだ。

「おい! 聞いているのか!」

無視された、と思ったのか赤城がムッとしている。

「だからですね、誤解です。愛人になろうとしたのは、私です」

「な~に~!」と赤城の顔が赤鬼になる。立ち上る湯気が見えるようだ。

女……頼むから、もう黙っていてくれ。話が益々……拗れる。

うんざりしながら、デスクの書類をポンポンと揃え、クリップで止めると、それを差し出す。

「早急に、とご依頼のサイト案です。五つ用意しました」

途端に赤城も仕事モードになる。オンオフのスイッチを正常みたいだ。
ペラペラとページを捲り、「ありがとう」と早速、持ち場に戻る。

「君ももう戻りなさい」

ポケッと見ている女に言う。

「――恭吾さん……やっぱり、カッコイイです!」