だが、どうしたことだ。
半月ほど、そんな風にあの女を避けていたのだが……。

もしかしたら、これが禁断症状というものだろうか?
甘い物が食べたい。あの女のスウィーツが無性に恋しい。

「まぁ! 恭吾さんったら、貴方ゾンビになっちゃったの」

久々に会った母は、昼間なのに悲鳴を上げ、僕だと分かるや否や、そう言った。
そして、竜崎に至っては……。

「矢崎課長、リバウンド? せっかく少しだけイイ男になったと思ったのに、前以上にバッチクなって。全く! 甘味を拒否するからよ!」

チッと盛大な舌打ちをされ、知った風に言われ、物凄く蔑んだ眼と共に、この世の終わり! みたいな溜息を付かれた。

クソッ、甘い物なら糖尿病になるかも、と思うぐらい食べた。
だが……ダメだった。市販の物では、満足しない……満ち足りない。

あの女を避けたがために、自分を取り戻すどころか、仕事さえも集中できなくなっていた。