「恭吾さん、貴方、顔色が良くなったわね」

母がすれ違いざまに言う。

そりゃあ、そうだろう。
あれ以来、スウィーツは勿論のこと、会社にいる時は決まって弁当が届く。
それも栄養満点の……。

「イケメン振りが一層上がったみたい」

ゴミ男と言われている僕を、イケメンと言うのは母だけだ。
まぁ、我が身の分身だから、そう思いたいのも分からなくもないが……。
どこをとってイケメンなのか、本人でさえ分からない。

「遥香ちゃん……だったかしら?」

ヘッ? と母を見る。

「あらっ、知らないとでも思ったの? 百合子さんに聞いたわよ」

ウフフとピンクのハートを飛ばし笑う母。
ゆ~り~こ~! ギリギリと奥歯を噛み、死刑! と呪いの言葉を吐く。

「良い子そうじゃない? その子のお料理が最高に美味しいんですって?」

首を傾げ、ウフッとウインクをするが……なっ何だ、その可愛い子ブリッ子は!

グルメクラブにも加盟している母は、美味しい物に目がない。
食べさせろ! と言っているのだろうか……頭が痛くなってきた。

「――仕事がありますので、失礼します」

もう、この場を逃げるしかない、と母の熱い視線を背に、そそくさと立ち去る。