「ハイ、喜んで!」

居酒屋かここは? 元気よく返事をする女に、いささかゲンナリする。

「あっ、それとコーヒーもお持ちしました!」

バスケットから、断熱紙コップを取り出すと、タスキにかけたままの水筒から注ぐ。この女……できる!

会社のパソコンは最新式ではない、なので防水機能など付いていない。
だから、僕はパソコン周りに飲み物など、水気のあるものは絶対に置かない。
ついうっかりで、いつなんどきパソコンに零すかもしれないからだ。

「はい、どうぞ」と手渡された紙コップを「ありがとう」と頂き、キャスター付きの椅子を少し後ろに移動する。

淹れたてではないが、インスタントではない香り高いコーヒーを一口飲む。
これも美味い!

「コーヒーも君が淹れたのか?」
「はい! 父が好きなので。バリスタの資格を取りました」

のほほんとして見えるが、意外にシッカリ者のやり手なのかもしれない、と少し見直す。

「恭吾さんは……あっ、百合子さんともお友達なので、苗字呼びはややっこしいくなりますから、名前呼びすることにしました――で、百合子さんから、甘い物に目がない、と聞きました」

百合子の奴、僕のプライバシーを何と交換した!

「――ああ、どちらかと言えば甘党だ」

そう思いながらも、手が止まらない。
二つ目のフルーツサンドを口にする。本当に旨い!