手の甲で涙を拭きながら、「――褒められたぁ、褒められちゃったぁ!」と泣く姿は……まるで子供だ。

どうしたものか、と思い、そう言えば、と思い出す。
昔、百合子がこんな風に泣いた時、母が百合子の頭に手を添え、撫でていた。

食べかけのフルーツサンドを口に入れ、おしぼりで手を拭き、女の頭にソッとその手を置く。そして、撫でる。

だが、いまいち撫で具合が分からないので、母が溺愛する愛犬レディーにするように、無造作に撫でた。

「あっ、あのぉ」

手の下で、まん丸い目をした女が僕を見上げる。

「もしかしたら、それ、ヨシヨシってしていてくれるのですか?」

どうやら涙は止まったらしい。よかった。

否、今の表現は間違っている。
どちらかと言えば、ワシャワシャだな、とホッとし、「泣くな」と告げ、再び腰を下ろす。

「美味いものを美味いと正直に述べただけだ。褒めたつもりはない」
「でも、それでも私、すっごく嬉しいです!」

また、あのクシャとした笑みを浮かべる。
おお! ゴマちゃんだ。やはりこの女は、幽霊でも妖怪でもない。まさにゴマちゃんだ。

「そうか、喜んでいるなら、まぁ、それでもいい――お前も一緒に食べるか」

何気なしに言ったが……。