「分かった。では頂こう。但し、僕には拘りがある。フルーツサンドの味には煩い。故に、一口で辞退するかもしれない。そこは了承しておいてくれ」

「ハイ! 旦那様」

どういう意味合いの旦那かは訊かないことにして、バスケットにあった使い捨てじゃない本格的なおしぼりで手を拭き、一つ抓む。

フンワリとしたパンの手触りにゴクンと喉が鳴る。
一口頬張り、アッとそれを見る。

美味い!

生クリームに加え、薄っすらと塗られたバニラクリーム、二層になっているのか!
フルーツの酸味と絶妙なまでのクリームの甘み……。
もしかしたら、否、今までで一番美味しいフルーツサンドかもしれない。

「君、これ、美味いよ」

僕はヘソ曲がりではない。
例え、妖怪だろうが、ゴマちゃんだろうが、美味しいものには美味しい、と素直に正当な評価を付ける。

このスタンスは仕事を通し培われたものだ。
だが、何だ?

「おい、君、どうした!」

叱ったわけでもないのに、女の目からポロポロ涙が零れ始めたのだ。
まさか、だろ! と思わず立ち上がる。

「うっ嬉しくて!」