雑然と置かれているのは、全て現在進行中の仕事のもの。

僕としては、ベストなポジション! と思っているのだが、他者から言わせると、ゴチャゴチャ! らしい。

「いったいいつになったら片付くの! 机の上で雪崩が起こっているわよ」

竜崎はメドゥーサの眼で睨むが、僕には効かない。
幼い頃から、そういう眼に対する耐性ができているからだ。
我が一族に比べたら、彼女など、まだまだヒヨッコだ。

いく種かの資料を退け、パソコンを掘り出し、電源を入れ、仕事の続きを開始する。

至福の時だ。その中に僕は身を置き、没頭する。
集中すると全てが無になる。時間さえも。

だから、どれぐらい経ったか分からないが、カチャンと金属の触れ合う音が聞こえ、意識がコンピュータプログラムの世界から現世に戻るのに、少し時間がかかった。

ようやく頭が回転し始め、ん? とパソコンの画面から視線を音の方に向けた途端、ハァ? と思わず声を出す。

非常灯の下に、あの女がいたからだ。

オレンジ色の光りを浴びたその姿に、こいつは、幽霊ではなく、実は神出鬼没の妖怪だったのか? と普段、何事にも動じない僕も目を剥く。

「――君……こんな時間に何をしているのだ」

白く丸い壁の時計を見ながら尋ねる。