ニコリと笑って軽く流すと、彼が不満そうに眉を寄せた。


「何でいつも流すの」

「貴方の冗談をまともに聞いてるほどコドモじゃないのよ、私」

「...俺はコドモってこと?」


よく分かってるじゃない。
まだスーツも着てないような年下のオトコノコなんて、私の恋愛対象に入らない。


くすりと笑って頷くと、拗ねた顔をして頬を膨らませた。


よく膨れるフグみたいな金曜日の“彼”。

結城拓巳、21歳。
職業は分からない。
けど、金曜日の夜にスーツを着ていないってことは、会社員ではないってことぐらい容易に想像できる。

働いてたとしてもアルバイト、てとこかしら。

何度聞いてもはぐらかすから、やっぱり学生かフリーターか、ニートか。
その辺りだろう。


「サエさんの恋愛対象になるにはどうしたらいいの?」

「貴方は一生無理よ。私、年上が好きなの」


また膨れた。


「拓巳、フグになれるわよ」

「え?」

「すぐ膨れるじゃない」


笑いが抑えられなくてクスクス笑って言うと思いっきり拗ねた顔。

そういう所が子どもなのよね。

私はもっと、大人の余裕のある人がいい。