どうしても一緒に台所に立ちたくて。


ぼやけた視界で握った包丁で指を切ってしまった。



慌てて傷口に溜まる血を拭い、



「あんなゆっくり切ってたくせに指切る? ちゃんと見ながら切ってたの?」



心配そうな声でブツブツと怒る光来がどんな表情をしてるのか……。

今の俺にはわからなくなっていた。


もうダメなのかもしれないって思った途端、諦めてたはずの恐怖心が頭の中を支配し始める。



ぼんやりとした輪郭を辿り、光来の方へと手を伸ばす。



「キスしていい?」



宙をさまよった右手が光来のあごを捉え、



「んっ……ちょっと……優羽っ」



何度も何度も強張る唇を貪るように味わった。