「今日はずっと、光来と居たいんだよ。だから帰ってくるな」


「…………」


さっきまで浮かべていた作り笑顔を止め、単刀直入に申し出た俺の言葉に兄貴が目を見開いて固まった。


そして、



「あんなにちっちゃかったおまえらもとうとうそんな歳になったんだな……」


「わかったら帰ってくんなよ」



感慨深げにポツポツと呟いてる兄貴にもう一度釘を刺しておく。


今日は恋人ごっこ最後の日で手術の前日。


俺にとって大切な日だからこそ、今日は光来だけと過ごしたかった。



……これで最後になるかもしれないから。



「まぁ……一応病人なんだから無理すんなよ」


「ヤダよ」


「……ハッスルしすぎて頭やばくなっても知んねーからな」


「いいよ。それでも」



薬くさい病院なんかより、光来の腕に抱かれて幕を閉じれるほうがずっと良い。



小さく漏らした途端、



「……そんなことして、遺された光来の気持ちはどうするんだ」



いつもより声色の低くなった兄貴に窘められてしまった。