「俺、思ったんだけどさ……光来」



優羽がカプチーノの泡をスプーンの先でグルグルとかき回し、ぺろっと舌先から口に含んだ。


「なに?」


口元まで持ち上げていたカフェオレのカップを止めてわたしは優羽に尋ねる。



「試しに俺と付き合ってみない? 一週間程」


「……はぁ?」



何食わぬ顔でサラッと言ってのける優羽と対照的に、驚いたわたしは目を見開いて優羽を見つめる。



「どうせ彼氏居ないだろっ? なら良いじゃん。俺と恋人ごっこしよ」



楽しそうに笑った優羽がねぶっていたスプーンを置き、カプチーノをぐっと一気に飲み干した。



それを訝しげに見つめながら、わたしの頭をよぎること。



そりゃ、彼氏なんてわたしには居ない。



だって優羽のことが……ずっと好きだったから。



優羽は気付いていないだろうけど……。



優羽が付き合ってきた誰よりも、優羽に憧れてる誰よりもきっと、ずっとずっと優羽のことが好きだ。



「なんで……わたし?」



ずっと幼なじみだったわたしに、急にこんな風に言ってくるなんて不思議で仕方ない。



「んっ? んー……光来なら俺のことよく知ってるから」


「えっ?」


「俺がなんで付き合ってもすぐ別れちゃうか、原因わかるんじゃないかって思って」