「俺、思ったんだけどさ……光来」



カプチーノの泡をスプーンの先でグルグルとかき回し、ぺろっと舌先から口に含む俺を正面で光来が訝しそうに見つめている。


「なに?」


「試しに俺と付き合ってみない? 一週間程」


「……はぁ?」




言葉に重みを持たせずサラッと告げた俺に、光来は驚いたように目を見開いてこっちを見つめてる。



そりゃそうだよな。

だって入学式の日にやんわりと突き放したのは他でもない俺自身だ。




「どうせ彼氏居ないだろっ? なら良いじゃん。俺と恋人ごっこしよ」



だからこれはあくまでも恋人ごっこ。



都合良くただの幼なじみの壁を打ち立てた俺の最後のわがままと未練。




「なんで……わたし?」



急にこんな風に言ってきた俺が不思議で仕方ないって光来の顔に書いてある。



「んっ? んー……光来なら俺のことよく知ってるから」


「えっ?」


「俺がなんで付き合ってもすぐ別れちゃうか、原因わかるんじゃないかって思って」




そんなのはただの言い訳。

原因はただ一つ。


俺が光来が好きだから、だ。