「腫瘍……?」


俺が自分の体を蝕む正体について聞かされたのは、丁度高校入学を控えた前の夜のことだった。


夕飯の片づけを終えた食卓でいつになく険しい顔をした父さんと、肩を大きく落とした母さんが正面に座ってて。


隣の兄貴は、


「でもな、十八まで何も無かったら安心して良いって。医者はそう言ってるらしい」



だから大丈夫だ。



いつもと変わらない笑い顔でポンと俺の額を小突いた。



「検診さえ受ければ今まで通り生活出来る。サッカーだって続けていけるぞ」



兄貴に触発されたように父さんも薄く笑い、俺を安心させるようにこう続けた。


だから、


「わかった。検診にはちゃんと行くようにするよ」



それに答えるように、俺もいつもと同じ顔して笑ってみせる。


何事も無いように……。




この時はただ、膝の上で震える拳を隠すことで精一杯の虚勢と見栄を張ることしか出来なかった。