「それがな、この間の練習試合で相手とぶつかって圧迫されたんだ……」



「そんな……」




「視力に影響出て来てんだ。なんか言ってなかった?」


「……ううん。何も」



あの試合以来。


優羽の視界は靄がかかったみたいに、日に日に見えにくくなっていたらしい。




優羽はそんなこと、一言だって言ってくれなかった……。



何も言わないで……ただわたしの傍で笑いながら恋人ごっこしてただけ。



「早いとこ手術しないと……失明しちまう。それに」



更に悪化すれば……別の影響だって与えかねない。



苦しげに呟いた想羽くんの言葉に、わたしの頭はうまく状況を理解してくれない。



「手術の前に光来と居たいって言ってたから……。昨日は一緒だったんだろ?」



「想羽くんっ! わたし優羽見てくる!」



「あっ! おいっ!」



一方的に想羽くんに告げ、わたしは慌てて電話を切った。




一刻も早く優羽に会わなきゃ。



わたしの頭にはそれしか浮かばなくて、気がつけば部屋から飛び出していた。



昨日の夜中。
わたしが出て行ったままだった優羽の家に入り、



「優羽っ!」



リビングのソファーに居るであろう優羽に呼びかけた。




「……優羽。優羽っ!」



ここじゃなかったらどこに居るの?




空っぽのソファーに身を翻し、わたしは縋る思いで優羽の部屋を目指して階段を駆け上がった。