「光来」


「優羽……」


「良かった来てくれて」



優羽の数歩後ろで立ち尽くしていたわたしに振り返った笑顔は、いつも通りの優羽だ。



片手でさっきまで座っていた椅子をしまい、



「光来が迎えに来てくれるの待ってた」



屈託のない笑みを浮かべながら、大きな右手を差し出してきた。



「来なかったらどうするの?」


「光来は絶対来るよ」


「どうして?」



自信満々の言葉がやけに頭に引っ掛かる。



肝心なことは何も言わない癖に……。

わたしの気持ちを見透かしたように優羽は、わたしの欲しい言葉をくれる。



「だって光来に会いたいから、俺」



優羽の右手に捕まえられた体が、腕の中へと引き寄せられた。



「答えになってない」



部活のことだって聞こうと思ってたのに……。



うまくはぐらかされたってわかってるのに、それ以上問い詰めることも振りほどくことも出来ない。