「あっ! ウチ見えた!」


ちょっとだけ切ない気持ちを胸に、デートの締めくくりに優羽が連れて来てくれたのはショッピングモールにある観覧車だった。



遊園地のには負けるけど、頂上近くにまでなれば充分に街を見渡せる。



夕焼けの空の色に染まった風景に沈んでた胸がちょっとばかし弾んだ。



「あの公園、懐かしくない?」



ずっと窓の外に向けていた視線を後ろの優羽に振り返りながら問い掛ける。



「ホントだ。懐かしい」



笑顔でわたしの言葉に同意した優羽の体温が、ふわっと背中を包み込んだ。



真横に並んだ優羽の顔を頬と頬が触れ合いそうな距離に感じる。



この瞬間からもう、外の風景なんてわたしの目には入って来ない。



全く読めない心を知りたくて、斜め後ろに優羽の顔を覗き見る。



そんなわたしとは反対に、優羽の目には夕焼け色の街の風景しか入っていなかった。



しばらくそうして、黙ったままだった沈黙を不意に破ったのは優羽だった。



「……俺らが遊んでた空き地、いつの間にかマンションになってる」


「ホントだ……駄菓子屋さんも無くなってるね」




思い出の残る懐かしい場所といつの間にか無くなってしまった場所。