わたしの涙を払っていた優羽の指先が止まり、不意に耳元で囁かれた言葉。



小さく掠れた優羽の囁きは、盲目の彼がしたためた手紙の締めくくりの一文だ……。



「寝てたんじゃないよ。……盲目の彼に成りきってた」



こう言ってクククっと喉を鳴らして短く笑う優羽に、わたしは小さくため息をついた。



「……物は言いようね」


「まあねっ」



わたしの皮肉をサラッとかわしちゃう優羽には正直呆れる。



まだ残る涙をゴシゴシと手の甲で払っていき、



「でも……なんで置いてったりするんだろ」



彼の手紙を握り締めて泣きじゃくる彼女の姿を思い出して、また涙腺が緩み始めた。



「身を引いたのは男の優しさだよ」


「それでも……好きな人に置いていかれるなんて悲しい」



払ったはずの涙が滲む瞳に困ったように優羽が笑う。


「そうだね。でも」


「でも?」


「置いて行く方もきっと辛いよ。愛してるのに守れないなんて歯痒いからね」



そのまんま言われた言葉がやけに真剣で、



「どうかした?」


「優羽が真面目なこと言ってるからビックリしてたの」



思わずまじまじとその顔を見つめるわたしに、優羽はくすりと小さく笑い声を零した。