「わぁ! 優羽見てみて!!」



兄貴にもらったケーキを箱から取り出した光来が、はしゃいだ声を上げながらキッチンから駆け寄ってきた。



……転ぶなよ。



両手にホールのケーキを乗せた大きな皿を抱えて走る姿は、右目が見えない俺より遥かに危なっかしい。



「はいっ」



しかも片手にはケーキ用のナイフを持ってる始末。



……こりゃ寝る前に説教だな。
ナイフ持って走るなって。




「優羽、これ置いて」


兄貴特製の真っ白なケーキには俺と光来の好きなフルーツが山のように飾られてる。



その真ん中に埋もれていた板チョコを指で持ち上げた瞬間、



「優羽も一緒に持って!」



いつもは正面に座る光来が隣に居て、ケーキ用のナイフを持てってせがんでくる。