それから、一睡もできず朝を迎えていた。



言うまでもなく、体調は最悪。



身体が、ものすごいだるい。



「美空、そろそろ起きないと遅刻。


美空!?大丈夫?」



顔色の悪い私を見て、香音が急いで近寄って来てくれた。




「今日はちょっと、学校休もうかな。


なんか、身体がだるいんだよね…。」



私の言葉を聞いて、香音は驚いていた。



無理もない。



私は、体調が悪くても無理して学校へ行っていた。



むしろ、休むのが嫌だった。




だけど、正直そんなことを言ってる余裕もない。




顔を見て、話すのも精一杯だった。





「美空、中森先生に電話しよう?


その状態だと、自分で病院へ行けないでしょ?」




「違うの。」




「えっ?」




「病院へ行くほどじゃないの。


だから、中森先生には言わないで。」




「でも…」




「お願い。中森先生に知られたくないの。


ちょっと考えたいから。


昨日も、考え事してて眠れなかったの。


病気のことじゃないから、あまり心配しないで。」




「美空、ちょっといい?」




「なに?」




「その顔、出会った頃と同じ表情してる。」




「何言ってるの…。そんなことない。」





「美空、昨日から様子がおかしいよ。


そんな表情、そんな悲しそうな表情あの日以来だよ。


美空、自分と向き合うことも大切だけど、抱え込むのはよくないと思う。


身体にだって負担がかかる。



もちろん、心にも負担がかかるよ。」




香音は、そう言って私の頬に触れた。




だけど、今は1人で考えたかった。




だから、私は香音の手をそっと自分の頬から外した。




「ありがとう。でも、今は1人にしてほしい。


ちゃんと、落ち着いたら話すから。


それまで待ってて。」




私は、香音にそう話すことが精一杯だった。




「分かった。しつこいと思うかもしれないけど、いつでも、私たちのこと頼っていいんだからね。」



「うん。ありがとう。」




香音は、そう言った私に少し安心した表情をして部屋をあとにした。