喫茶店をあとにしてから、浜辺へ向かっていた。



広く、限りない海を見ていたら全てがどうでもよくなると思った。



ギターを持ち歩いていたから、ギターの練習でもしようかな。



大好きなギターのはずなのに、全然スッキリなんてしなかった。



音も濁っているような気がする。




「はぁー…。」




思わず、大きな溜め息が出てしまった。




どうしよう…。




今、みんなの所に帰ったら変に動揺してしまう気がした。




大翔は感が鋭いから、絶対すぐに気づくだろうし…。




心臓のことなんて、今まで気にしたことなんてなかった。




腎臓と心臓って関わりがあるんだな…。




「美空?」




「あっ、翔太。こんな所で何してるの?」




「それは、こっちのセリフ。



美空が、中々帰ってこないってみんな心配してるよ。」





時計を見ると、気づけば20時近くを示していた。




「もうこんな時間だったんだ…。」




「さっ、一緒に帰ろう。」




「私、もう少しだけギターの練習してから帰るね。


翔太、先にお家に戻ってて。」




「なぁ、美空。」




そう言うと、翔太は私の隣に腰を降ろした。




「寒いから、風邪引いちゃうよ?」




5月とはいえ、さすがにまだ夜になると冷える。




半袖の翔太が寒そうに見えた。




「俺のことはいいんだ。


それより、何かあったの?


美空が、浜辺でギター引いている時っていつも何かあった時でしょ?」




翔太の言う通り。




嫌なこととか、何かあった時、私はこの浜辺に来てギターを弾いている。




幼なじみには隠せない。




「私、兄にあったの。」




「えっ?」




目を丸くして、翔太は私を見つめた。





「退院した日、私の携帯に兄からメッセージが入ってたの。


その事で、前に千鶴先生にも相談しに施設に行ったの。


どうしても連絡せざるおえない状況って書いてあって、気になったから兄に会ったの。


4月の頭に健康診断やったでしょう?



それで、心電図に異常が見られたんだって。」




私は、兄に渡された封筒を翔太に渡していた。



「嘘…だろ?」




「嘘であってほしいよね。」



翔太は、何かを考えているかのようだった。



それから、しばらく沈黙が続き翔太は口を開いた。




「そのこと、中森先生は知ってるの?」