「もう、可愛いだなんて、仰らないで下さい。僕、女の子じゃあないんですから。」

姫の衵の袖が久光の顔にあたって、「くすぐったいなぁ」と呟く。

「そうだ!」

久光は懐から花を1輪取り出して、姫の髪にさした。

「ほら、お美しい。」

「そうかしら?確かに、花は美しいけど。」

「見られてもいけない程、美しくない、と仰られていましたけれど、それは、違いますよ。」

姫がいじってズレた花を、久光はそっとなおした。