その瞬間に、父君は苦しそうに咳をした。

「父上、父上!」

顔を顰めた父君は、そのままバタりと床に倒れ込んだ。

「駄目でございます、逝っては、なりませぬ!お戻りください、父上!」

その言葉も、女房達の看病もかいなく、彼は亡くなる。

やがて母君も後を追って亡くなった彼は、支えてくれる者を失った。

乳母が何とかツテを探し、従姉妹が仕えている邸へ奉孝することとなる。

(嗚呼、僕は、零落したのだな。)

彼はもう、表舞台に立つことを許されない。
かつての栄華も、取り戻せない。