「そうか………………」

久光は寝殿に住まう父君をたいそう心配していた。

「あちらには腕の良い医師も、お手伝いの女房も数多おります。貴方様がどうこう出来るわけでもありませぬでしょう。」

「そうだな………………」

乳母は、ふう、と溜め息をついて、哀しそうな眼差しで久光を見た。

乳母からすれば、久光は身分に恥じない、有能で見目麗しい若君だった。

実を言えば乳母も、父君の体調に陰りがあるのを知っていた。

(いざとなれば、我が若君様をお守りせねば。)

固く、決心していた。