「そうですよ、姫様。」

珠寿も頷いている。

「奢れる者も、やがては朽ちるもの。栄華など、儚いものです。ほら、例えば僕みたいな。」

珠寿は、何を言っているのだろう、と思った。
姫君は、知っていたのだが。

久光は上流の家の子だった。
だが、父君が、久光が成人する前に急に死んでしまったのだ。

「珠寿。貴女は知らないようね。久光は元々、私よりも上流の家の子よ。まぁ…………零落してしまったのだけれど。」

「零落?」

「父が、僕を残して死んでしまったのです。急に。」