幸い、家族達は、長いこと帰ってきはしなかった。

姫も珠寿も、事情を知らぬ久光までもがそれを喜んだ。

「大君様なんて、一生お帰りにならなくて、結構ですわ。」

と、珠寿が言う。

「そうよね。あの娘は、色々と嫌なことを押し付けてくるもの。迷惑だこと。」

「でも、その大君どのはとってもお馬鹿な方ですね。」

「え?」

「大君どのは貴女のことを、『曼珠沙華』とお呼びしておりますが、曼珠沙華って、天界に咲く花、と言われてますよ。」