「本当?良いのですか、姫様。」

「えぇ、勿論よ。でも、此処から出てはいけないわ。皆にバレたら、お祓いされるかもしれないもの。」

姫君は、何より、昔から知っている懐かしの人を離したくなかったのだ。

(この人も、いつかは、懐かしの人となるのだわ。嗚呼、悲しいことね。)


2人が出会ったのは、幾つの頃だったか。
彼女等は、とても幼かった。
そして、2人は、幼馴染なのだ。

2人はよく、庭で花を摘んだり、池の魚を見たりしていた。

その度に、姫君は母君に「駄目でしょう」と叱られた。
久光も、懲りない姫様だなぁ、と思っていた。