曼珠沙華 -夢の通路-

「我に露 あはれをかけば たちかへり 共にを消えよ 憂きはなれなむ」

彼女は、知っていた歌を詠んだ。

『落窪物語』で、主人公の姫が呟いた歌だ。

(まるで、私みたい。)

同じ境遇の人はいるのかしら、と姫は笑う。

「姫様。」

後ろから声がした。
嗚呼、珠寿ね、と姫君は思う。

「久光です。」

「久光?」

「貴女が、『たちかへり』なんて仰りますから。僕、戻って参りました。」