「中の君に伝えてね。」

中の君とは、琴乃の姫君のことである。
大君は、姫君よりも、2つ歳上だったからだ。

「明日から、お寺参りに行きますけれど、貴女も行きませんか、と。」

「承知致しました。」

その言葉を承ったのは、大君の女房であった。

『お参りは、曼珠沙華の分は、断るようにね。』

そして、その女房は少し時が経ってから、「あの、北の方様」と、参った。

「中の君様は体調が優れないらしく、おやすみ遊ばされます。」