(酷いわ、この箏は、代わりなんて無いのに。)

姫君は涙を零しながら、壊れた箏を撫でた。

(久光………………………)

懐かしいわ、と姫君は思った。

その昔。
姫君が自室で箏を弾いていると、近くにいた久光が、「何て美しい音でしょう」と、声をかけてきたのだった。

「姫様。」

「何。」

「どうして、このように大君様は辛く当たられるのでしょう。まだ、出会って1日しか経っていませんのに。」

「私が、継子だからよ。」