「大君。何処も破れていなかったわよ。」

「ふーん、あっそう。」

「知ってたわね?なら、何故私の所へ態々持ってくるの。訳が分からない。」

「は、生意気な。態々あたしが此処に来てやってるの。」

姫君は、破いた袿を大君の前に散らばらせた。

「あんた、ほんっとに最低。」

そう言い捨てて、大君は部屋を退室した。

「すまない、姫。大君はあんな娘じゃないのだよ、普段は。だから、許しておくれ。」