「きゃあ、姫様!」

投げつけられた袿が滑り落ち、姫君の手に渡る。

「縫え。」

「…………」

「縫えって言ってるでしょ!!!」

姫君は珠寿に手招きし、裁縫道具を持ってこさせた。

やっとやる気になったのか、と大君は思う。

しかし、姫君が手にしたのは針と糸ではなく、大きな鋏だ。

「何を。」

まさか、と大君は苦笑いした。