邸の、部屋に帰ると、珠寿がカンカンに怒っていた。

「姫様、まぁたそんなにお衣裳を汚されて!」

姫君の着ていた衵は、裾が少し、泥で汚れていた。

「花を、摘んでいたのよ。これ、生けといて。」

「はい、分かりました。姫様は、どうぞ、お召し換え下さい。」

「お母様には、言わないでね。」


「まぁ、琴姫様。お衣裳の裾が、泥で……………」

年上の女房が、新しい衵を持って来て、姫君に着せた。

姫君の名は、琴乃の言い、皆からは琴姫と呼ばれていた。